長屋クイズアリーナ3が完成しました

だいたい半年くらい取り組んでいた長屋クイズアリーナ3の制作に一区切りつけることができました。春休み中に作り終えるなんてどの口が言ってたんでしょうね*1。作業量の見通しが甘すぎました*2。いやでもまあ難産ではありましたが、めでたい話です。

さて、長屋クイズアリーナ*3は僕なりに色々なことを考えて作りました。折角だしそのあたりの記録を残しておきたいなっていうのが今回の記事の趣旨です。ちょっと長いので、回れ右するなら今のうち。

野暮かもしれませんが予め断っておくと、この記事は「僕はこう考えた」という日記でしかなく、これを読んだ人に何か考えてほしいという意図はまったくないです。制作裏話くらいの気持ちでお読みください。

経験者と未経験者が一緒に早押しをするという困難

長屋クイズアリーナはクイズ慣れした経験者と未経験者が混ざってオンラインで早押しクイズをするために生まれました*4

僕は時折、そういう場で早押しクイズをします。 早押しクイズは元々からして楽しいゲームなので、クイズの腕に覚えがあろうがなかろうがわいわいやることができるのですが、3つ大きな問題があると感じていました。

1. オンライン早押しクイズは環境整備が面倒

環境整備は普段からクイズをしている人にとっては大した問題ではありません。往々にしてそういう人たちはクイズのためなら多少面倒だろうが頑張って準備するからです。一方で、そうでない人たちにとって「面倒」は死活問題です。楽しいより面倒が大きくなれば、誰もそれを遊ぼうとは思わないでしょう。

「面倒」で済むなら話はまだ簡単な方で、実際は「不可能」かもしれません。例えば僕は今実家暮らしですが、家のルーターの管理者権限を持っていないのでポートの開放ができません。これは早押し環境の構築の大きな障害になります。また、人によってはスマホは持っていても自由に使えるPCを持っていないかもしれません*5

誰でも簡単に用意できるオンラインクイズの環境はないものでしょうか?

2. 経験者と未経験者の実力差は埋めがたい

これは殊に早押しクイズにおいてはとりわけ顕著な問題です。 断っておきますが、ここでは強くなるための努力の話は問題にしていません。今この場で各々が持ち合わせている実力を前提にして、クイズ経験の有無を問わずに、和気あいあいとしたゲームが成立するかという話です。

さて、大きな実力差というのはゲームにどのような影響を与えるでしょうか。

まず未経験者にとって、必ず完敗し続けるようなゲームは面白くありません。武者修行でもしようっていうなら話は違いますが。

また、経験者にとって、常に手加減を要求されるゲームは面白くありません。ゲームはすべてのプレイヤーが勝利に貪欲であってこそ面白いものになるからです。

さらに両者にとって、1stスラッシュが奪えない状態*6やそもそもボタンが押せない状態が長いゲームは面白くありません。ゲームに干渉できないのならば参加していないも同然だからです。

したがって、両者が全力を尽くし、両者が均等にボタンを点け、ダウンタイム*7が短く、勝ったり負けたりの勝負ができるルールが必要です。

しかし、このようなルールは早押しクイズにはなかなかありません。 なぜならこれらの条件は相矛盾するからです。 両者が全力を尽くす仮定を置く以上、経験者は未経験者より当然指が早い*8ので、均等にボタンを点けるには経験者には適当なタイミングで休んで*9もらわなければなりません。しかし、これはダウンタイムを短くすべしという方針に矛盾します。

勝ったり負けたりというのも難しい話です。ゲームなのですから基本的には強い方が勝ちます。これを解決する手っ取り早い方法はダイスなどのランダム要素を導入することですが、これはゲームのテンポを悪くしますし、何より「勝った感」を薄めます。

「両者が全力を尽くし、両者が均等にボタンを点け、ダウンタイムが短く、勝ったり負けたりの勝負ができる」ような早押しのルールはないものでしょうか?

3. 僕の盛り上げ方が下手

完全に個人的な話ですが、僕は司会進行に向いていないようです。話が下手。

経験者だけでクイズをするならストイックにガシガシ押してればいいので、盛り上げ方がどうこうなどと悩む必要はないのですが、未経験者も同席している場でそれはどうなのという気がします(十中八九引かれると思います)。

話下手でもなんとか楽しいクイズを進行できるような仕掛けはないものでしょうか?

長屋クイズアリーナ3という答え

1も2も3も、長屋βを作る前からずっと意識していた問題です。 長屋クイズアリーナはこれらの問題に答えようという考えの下に作られました。 そして、今回の長屋3に至ってようやく僕の答えを形にできたかなと思います。

1への答え: Webアプリケーション化とシンプルなUI

誰でも簡単に用意できるオンラインクイズの環境はないものでしょうか?

OSもインストールもdll依存もポート開放も何も分からなくても、ブラウザさえ使えればWebアプリケーションは動きます。これこそ「誰でも使える」に最も近い形です。 長屋2まではスマホからの使用には対応できていませんでしたが、3でほぼ対応しました*10

しかし、アプリケーションにアクセスできるというだけではまだ不十分です。 環境整備をするということは「その環境を使えるようにする」ということです。つまり使い方が分からなくては意味がありません。それも簡単に。説明書を読まなくても見ただけで分かるUIデザインであるのが理想です。

長屋βはこのあたりが全然で、見ただけでは何がなんだか分からない出来でした。操作箇所と作用箇所が物理的に遠いために関連が直感的に理解できないだとか、些末な機能が主要な機能と同じくらい目立つために重要な部分が見て取れないだとか、反省点は山程あります。

長屋3では、必ず必要な機能は大きなボタンでアクセスできるようにして、アイコンとともにラベルも表示しています。必ずしも必要でない機能は小さくアイコンのみで表示し、説明不足な点はマウスオーバーによるヒント表示で補足しました。とりあえずぱっと目につく部分だけ見れば、使い方の大まかな流れは掴めるように配慮したつもりです。

UIまわりはほかにもあれこれ考えた結果あのような形に落ち着いたのですが、まだ完全ではないように感じています。 例えば、ルール設定方法が初見では分からないかもしれません。Delayの意味もすぐには伝わらないでしょう。

何か意見があればぜひ教えてください。

2への答え: 遅延ハンデと変則ルールの実装

「両者が全力を尽くし、両者が均等にボタンを点け、ダウンタイムが短く、勝ったり負けたりの勝負ができる」ような早押しのルールはないものでしょうか?

この問いに対する答えのひとつが遅延ハンデ、つまりDelay機能です。

経験者が未経験者よりも早い指を持っているのはもう仕方がないので、経験者の反応をシステム的に遅らせてやろうという発想に基づいています。これはかなりいいセンいっていると思っているのですが、早押しの猛者にはこれも枷にはならないようです。奴らは出題レベルがabc並だと見抜くと「問題」と言った瞬間にボタンを押します*11。ちょっと引いちゃう*12

もうひとつの答えは変則ルールの実装です。KobanzameとNaidesuは僕がこのために考案したオリジナルのルールで、とても気に入っています。

Kobanzameは「クイズの答えが分からなくても押すことに意味がある」ルールです。分からない問題でもあえて「それらしいタイミング」で押すことで、セカンドのポジションを得て点数を得たり、逆に上級者をセカンドにつかせることで自爆するなどのプレイングができるからです。 僕の経験上、誤答ペナルティがまったくなかったとしても初心者は早押しを躊躇します。きっと誤答そのものを怖がるのだと思います。その点、「わかりません」と堂々と言えるこのルールは、初心者の指を軽くしてくれるはずです*13。 僕がプレイしたときも、並み居る経験者を抑えて未経験者が優勝したり、ひどいときは正解数ゼロの人が優勝したりもしました。でも、これこそが僕が求めていたプレー感です。

Naidesuは「経験者にも押させてあげるけど答えさせない」というアプローチで、すべてのプレイヤーの押す機会・答える機会が均等になるよう意図したルールです。実際のところ、このルールで遊ぶと大抵の場合はなんだかんだで経験者が勝つのですが、それでもかなりいい勝負ができます。特に、未経験者に「経験者と押しあって、押して正解できる」という体験を提供できるあたりがお気に入りです。

このあたりのルールはオフラインクイズだと処理が面倒過ぎてボツになってしまうところですが、これをテンポよく遊べるのはオンラインならではかなと思います。

3への答え: 演出の充実

話下手でもなんとか楽しいクイズを進行できるような仕掛けはないものでしょうか?

シナリオが微妙でもグラと音楽がいいゲームはそこそこ面白く感じるのと同じ理屈で、アニメーションやらSEやらを充実させれば司会が下手でも許される*14んじゃないかな~……というつもりで、演出には少しだけ凝りました。 ゲーム開始終了時・点数変化時のアニメーションは実装が結構面倒なのですが、わざわざ時間を割いて作ったのはそういう下心があります。

アニメーションが功を奏したかどうかは自信がありませんが、それはそれとしてボタンSEにふざけたものが多いのは割とウケたようです。 「じゃーーーーーん!!!」と銅鑼を鳴らしながら誰かが解答権を掻っ攫っていくだけでみんな勝手に笑ってくれるので、司会進行としてはやることがなくて大変楽ができました。

フレーバーを設定できるという謎の仕様や、謎のファンファーレ機能、それにスラッシュタイミングの可視化も「盛り上がりやすくしたい」という考えが背景にあります。 適当に活用して笑ってくれれば本望です。

今回省いた話

つらつら~と書いてきました。大体書けたかなあと思います。

操作性向上のためにショートカット作ったとか、画面面積を有効活用するためにコントローラーはコンパクトにまとめてチャットは畳めるようにしたとか 、そういう細かい話はまだありますが、特に何らかの信念に裏打ちされているわけではないので割愛します。折角だし使いやすいほうがいいよねくらいの気持ちです。

表に見えない話ですが、ソースコードも随分スッキリしました。が、どうスッキリしたのかを語っても本当に何も面白くないと思われますのでこれも割愛します……。

今後の話とまとめ

しばらくはバグ修正以外はしないつもりです。プログラミングばっかりやってたら僕もクイズしたくなってきたので。 そのうちスコア修正処理のスマホ対応とか、ルールの追加とかはするかもしれません。

ここに書いた話は長屋を作った側の人間の話です。長屋を使う人はこんな偏屈なことを考えず楽しくクイズしてくれればと思います。

宣伝

最後にちょっとだけ。

長屋3の隠し機能

これは完全に僕の趣味でしかないのですが、長屋3には隠し要素を仕込みました。こういうのやってみたかったんですよね~~~~。

この記事を書いた時点で全部で3つあります。難易度の加減がいまひとつよくわからなかったのでアレですが、まあ多分見つかります。探してみよう!そして見つけたらこっそり教えてください。

長屋クイズボタン

長屋3の開発途中に長屋クイズボタンというものもできあがってしまいました。長屋から「ボタンが光る」以外の全てを削ったただのボタンです。 早押し機供給問題の一助になる……かなあ……

やっぱりオフラインクイズで押し機の代わりに使うと遅延が気になりますが、おもちゃ程度にはなるんじゃないでしょうか。出先で急に押し機が欲しくなることあるでしょ?

*1:この口 http://powapowa-peng.hatenablog.com/entry/2018/03/07/025405

*2:当時の文体を見てもナメているのは明らか

*3:NQAって呼んだ方がかっこいいなーと思ってるけど、エゴサ(誤用)ビリティが低いのであまり定着させたくない

*4:もちろん今は汎用オンラインクイズツールとして開発している部分もありますが、元々の目的はそうじゃなかったという話です

*5:高校生にはこのパターンが多いらしいと聞いている

*6:「押し負けるのもまた楽しい」というのも分かりますが、それは初心者と上級者の間でも必ずそうでしょうか?

*7:他のプレイヤーが何かしらの行動を取っているのを待つ時間のこと。つまり、黙ってゲームを見ているだけの時間のこと

*8:ボタンを押すタイミングが早いという意味

*9:数問の間、ボタンを押す権利を剥奪するという意味

*10:スコア修正機能は未対応

*11:問題集を混ぜて読むなどの対策はある

*12:褒めてる

*13:0点のときの自爆にペナルティがないのも、初心者の指を軽くするため

*14:許してください